今回は 尿に石ができる‼お話です。
尿は 血液の中の老廃物を 体の外に出します。
尿は 腎臓で作られます。
血液が腎臓に入り 濾過 再吸収され 体に必要のないものを
尿として出しています。
腎臓で作られた尿は 尿細管 膀胱 尿道 を経て 体の外に出ますが
経路のどこかに 石が出来てしまう事を 尿路結石といいます。
今回は10年前 尿道に結石が詰まり 尿がでなくなり 人口尿道を
作り 一命をとりとめた 19キロの男の子 まもなく 13歳になるわんちゃんの膀胱に 結石ができてしまったお話です。
毎年 当院で フィラリア予防をなさって下さいます。
おいでになる度に 今年も元気で 過ごせていたことを 嬉しく思っておりました。
ところが 最近 尿に血が混じる との事で ご来院なさいました。
大手術後 10年ぶりの 尿検査。。。。
タンパクや 潜血が かなり出ていました。
血液検査では 炎症 肝機能低下 がみられました。
レントゲン検査で 膀胱に 大きな結石が 何個も ありました。
膀胱の中に 異物があるのですから 膀胱炎になります。
膀胱の上皮は 移行上皮と呼ばれ スライド式になっていまして
膀胱の中に尿が少ない時は 何層にも重なり 膀胱の容積を小さくし
膀胱の中の尿が多くなると 上皮細胞がスライドし 層の重なりを少なくし
膀胱の容積を大きくします。
長きにわたる膀胱炎で 細菌が膀胱の上皮に入り込みますと
スライド機能が失われ 膀胱の収縮が悪くなり 残尿感を伴います。
そして また 何回も尿をしたくなる。。。
慢性の膀胱炎は やっかいなのです。
膀胱内の結石は その成分により お食事で溶かすこともできますが
今回は とてもとても。。。溶かすのに 何年かかるのだろう。。。
と思うほどの大きさでしたので
ご高齢の大型犬でしたが。。。。
手術をし 結石をとる事になりました。
勿論、 内科療法で 肝機能 炎症を 改善いたしまして
膀胱切開術をいたしました。
↑の写真が 摘出いたしました 膀胱結石です。
結石の成分検査で この結石は リン酸アンモニウムマグネシウムが成分だという事がわかりました。
↑の写真は 尿を顕微鏡で見た時の リン酸アンモニウムマグネシウム結石です。
顕微鏡でこの大きさですから かなり小さいのですが この小さい結晶を
核とし 大きな結石となると言われています。
↑の写真は 血尿の写真です。
長い間 膀胱炎を起こしておりますと かなりの血尿になります。
血尿が原因で 貧血を起こす事もあるのです。
無事 結石も摘出でき 今回も 抜糸のいらない縫合をいたしました。
さて。。。。
このわんちゃんは 10年前に尿道結石を患い 量販店で結石用のお食事を
購入しておられましたが、結石になってしまったのです。
尿路結石は 細菌感染や 酸性やアルカリ性の尿で 形成されることが多いのですが
量販店さんでは 何の検査もせず お食事を 自由に買う事ができますので
このわんちゃんの体には 合わない療法食を 買い 食べさせていたのでしょうか?
療法食は 食事自体が お薬と同じ効果があります。
毒にも薬にもなるのです。
療法食を選ぶ時には 常に 獣医師による 検査や 診察が 必要なのではないでしょうか?
また たまには 健康診断をし 見た目では なかなか発見できない病気を
早めに 見つけ出すことの重要性を 再認識いたしました。
元気に 退院し オーナー様と共に お車に乗る わんちゃんの姿を
見送りながら
元気で オーナー様のもとに お返しできた嬉しさと
わんちゃんが オーナー様の元で 本当に嬉しそうにしていた事に
涙がでました。